(1)所得税
所得税については、雇用形態や就業構造の変化も踏まえながら、所得再分配機能等を回復するため、社会保障と税一体改革において、税率構造を含む改革を進める必要がありますが、平成24年度税制改正では、それに先立ち、課税の適正化の観点等から、緊要と考えられる以下の見直しを行うこととします。
給与所得控除の見直し
給与所得控除については、「勤務費用の概算控除」と「他の所得との負担調整のための特別控除」(以下「他の所得との負担調整」といいます。)の二つの性格を有しているものとされています。
しかし、就業者に占める給与所得者の割合が約9割となっている現状で、「他の所得との負担調整」を認める必要性は薄れてきているのではないかと考えられます。
また、現在の給与所得控除については、マクロ的に見ると、給与収入総額の3割程度が控除されている一方、給与所得者の必要経費ではないかと指摘される支出は給与収入の約6%であるとの試算もあり、主要国との比較においても全体的に高い水準となっています。
イ 給与所得控除の上限設定
現在の給与所得控除は、給与収入に応じて逓増的に控除が増加していく仕組みとなっており、上限はありません。しかし、給与所得者の必要経費が収入の増加に応じて必ずしも増加するとは考えられないこと、また、主要国においても定額又は上限があること等から、給与収入が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の上限を設けることとします。
なお、役員給与等に係る給与所得控除については、税率構造を含む改革の方向性を踏まえ、引き続き検討していきます。
ロ 特定支出控除の見直し
今般、給与所得控除に上限を設けることに併せ、特定支出控除を使いやすくする観点から、特定支出の範囲を拡大するとともに、特定支出控除の適用判定の基準を見直すこととします。
具体的には、就労の多様化等を踏まえ、現在、特定支出の範囲から除外されている弁護士、公認会計士、税理士など、法令の規定に基づいてその資格を有する者に限って特定の業務を営むことができる資格の取得費を特定支出の範囲に追加します。
また、図書費、衣服費及び交際費(以下「勤務必要経費」といいます。)も、特定支出の範囲に追加します。なお、この勤務必要経費については、高額なものを購入できる高額所得者を過度に優遇するといった不公平が生じないよう、上限を設けることとします。
さらに、特定支出控除の適用判定の基準となる控除額については、給与所得控除の二つの性格について、各々2分の1であるとして、「勤務費用の概算控除」部分、すなわち給与所得控除額の2分の1の額とし、給与所得者の実額控除の機会を拡大します。
なお、特定支出の範囲については、諸外国の例や拡充後の制度の定着状況等を踏まえ、引き続き検討していきます。
退職所得課税の見直し
退職所得については、長期間にわたる勤務の対価(給与)が一時期にまとめて後払いされるものであることや、退職後の生活保障的な所得であること等を考慮し、退職所得控除額を控除した残額の2分の1を所得金額とする累進緩和措置(以下「2分の1課税」といいます。)が採られています。
一般的に、短期間勤務の結果支給される退職金については、退職所得控除により課税が生じることは少ないと考えられますが、2分の1課税を前提に、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受取りを繰り延べて高額な退職金を受け取ることにより、税負担を回避するといった事例が指摘されています。
このように、一般従業員の退職金とは相当に異なる事情にあることを踏まえ、勤続年数5年以内の法人役員等の退職所得について、2分の1課税を廃止します。
(2)個人住民税
個人住民税については、「地域社会の会費」的性格をより明確化する観点から、所得税における諸控除の見直しや低所得者への影響にも留意しつつ、個人住民税の諸控除の見直しについて検討を進める必要があります。平成24年度税制改正では、所得税における給与所得控除の見直し及び退職所得課税の見直しを、個人住民税にも反映することとします。
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